サケの卵から稚魚までの成長を見たことがありますか?
あるとしたらそれは学校での行事でかもしれませんし
サケの放流事業を行っている地元の行事でかもしれません。
でも、ちょっと待ってください!
そのサケの卵
地元の川に遡上したサケの卵ですか?
鮭(サケ)稚魚の放流っていい事?悪い事?
もし、あなたが学校や自治体のサケの稚魚放流事業にに参加しているならば
サケの稚魚を育てて放流する前に自分の行動に疑問を持って欲しいと思うのです。
もし、放流する川にサケが遡上している・遡上していた(過去に遡上していた)記録がなければ
あなたの行為、あなたの地元の川の生態系を壊す恐れがありますよ。
サケが元々遡上しない川でのサケの放流は大きな問題があるので注意が必要です。
それはなぜかわかりますか?
この記事ではサケの稚魚の放流がなぜよくないのかをまとめてみました。
この記事で分かること
・サケの稚魚の放流がなぜ問題なのか
・サケの稚魚を放流することで起る問題
・ 日本淡水魚飼育歴約20年(サケの仲間ヒメマスの卵~飼育経験あり)
・生物分類検定3級(現在2級水圏受験勉強中)
・ビオトープ管理士2級
・こども環境管理士2級
・ネーチャーゲームリーダー
・自然再生士(補)
などの自然環境系の資格所持
子供のころから川が好きで魚たちが沢山泳ぐ川になってほしくて地域の河川清掃のボランティア活動や子供たちに川を通しての環境教育を行っています。
水産資源としてのサケの放流事業と地域のイベントとしてのサケの放流事業
日本では「サケの孵化放流」事業が成功し、今では沢山のサケが取れるようになりました。
サケの人工ふ化放流事業は我が国の重要な水産資源で、美味しいサケが私たちの家庭の食卓に並ぶのもこの事業が成功したおかげです。
とてもありがたい事ですね。
そして、近年全国各地でも学校や地域のイベントとしてサケの稚魚を放流するイベントを多く見聞きするようになりました。
その背景は、サケを通じて地域の人や子供たちに自然や生き物の命の大切さや健やかな心身の発達を育むようにと願うもののようです。
地域の人たちや子供たちが自然や生き物の命の大切さを学ぶ機会は大切なことだと思いますし、子供たちの一生懸命に自然を学ぶ姿はほほえましいものですね。
しかし、日本の水産資源管理の為に行われているサケの人工ふ化放流事業ともともとサケのいない川にサケの稚魚を放流する事は全く別の行いなので注意が必要です。
安易な鮭(サケ)の稚魚の放流問題
気になることがあります。
放流を行う川は、もともとサケが遡上してくる川ですか?
今は記録がなくても、過去にサケが遡上した記録がありますか?
もし、皆さんの暮らす地域の川に遡上することのないサケを放流しているということならば
大きな問題があるので注意が必要です。
参考
日本で水揚げされるサケはシロサケ(シロザケ)と言われるサケです。
ほかにもカラフトマスやサクラマスなどがいますが
放流されるサケはシロサケと言われるサケの仲間です。
鮭の一生やサケが帰ってくる川、母川回帰率についてはこちら→日本の鮭(サケ)の一生と帰ってくる地域と母川回帰率
鮭(サケ)がいない川の鮭(サケ)は国内移入種?
本来サケの遡上がない河川へのサケの放流は、れっきとした【国内移入種】の放流になります。
そもそも遡上の記録がない川の緯度ではサケが産卵に戻ることはないので、本来サケが遡上しない川へのサケの放流は無意味であり、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。
鮭(サケ)が元々遡上しない川にわざわざ稚魚を放流することによる悪影響
今はその影響は目に見えてわからないかもしれませんが、
サケの放流が年中行事として続けば少なからず生態系に悪影響を与える事を知っておく必要があります。
サケを放流することで起る悪影響をまとめました
在来種とエサの競合
在来種の産卵場所や時期や住み家が重なることで在来種の数の減少
小魚を食べる鳥や肉食魚が増えることによって在来種の数の減少
魚を捕食する鳥が増加し河川周辺の糞害
ウイルスや病気の拡散や仲介
近縁の在来種やサケの遺伝子交雑
遡上時期の異なるサケの放流により遡上・産卵時期の変化。
孵化・放流により遡上するサケの小型化や減少
水の中だけではなくその周りの環境(鳥類、昆虫、植物など)にも連鎖的な被害
生物多様性を破壊
数多くの影響がある事がわかりました。
近年の河川改良や自然破壊で棲む環境を奪われ続けていても尚たくましく生きている在来種も、安易な放流で絶滅に瀕する可能性や周りの環境も変えてしまう懸念があります。
サケの遡上しない川への放流に対して思う事
例えば、関東のある河川での例を挙げます。
その川は初夏になると天然のアユが遡上してきます。
都会の河川に数年前から沢山のアユが遡上している!と、川を見守る人達はその姿にとても喜んでいたほどです。
そんな中、その河川の下流の街では数年前から震災の復興支援としてて他県から譲り受けたサケの卵をふ化させ稚魚になるまで育て放流するという行事が行われるようになりました。
震災を風化させないことと命の大切さや生き物に対する優しさを子供たちに育んでほしいと地域の幼稚園や保育園、小学校に5000個余りのサケの卵を配り、それぞれ稚魚まで育てられ地域の学校や地元企業を巻き込んだサケの放流イベントは毎年大いに盛り上がっています。
けれども子供たちを巻き込むことで
サケの放流事業はなんとなく「いい事・ほほえましい事」のような気持になりますが
果たしてそうでしょうか?
疑問があります。
サケのいない川に万が一、
もし万が一数年後に放流したサケが産卵のために帰ってきた時、
そこに産卵場の用意は出来ているんでしょうか?
その川はサケに適した水温ですか?
その川はサケが暮らせる環境がありますか?
その川はサケがいる事で生態系は壊れませんか?
その川の水質浄化や、魚道の整備や河川の整備は行われていますか?
そもそも、帰って来たことはどうやって確認するんでしょう?
まさか放流しっぱなしではないでしょう?
サケが本当に帰ってくることを願っていれば、そこまで考える必要がありますよね。
※きちんと放流を行っている自治体は行政と市民で鮭(サケ)が帰ってこれるようこのような問題も解消し取り組みを進め放流を行っています。
どこかしらかのサケの卵を入手し一方的に卵を孵化させ、サケがもともといない川に稚魚を放流するだけでは自然に対して非常に無責任で残念な行為に思います。
当たり前の事ですが、ここの河川は10年ほど放流を行っていて未だにその川にはサケは帰ってきていないそうです。
帰ってこないのは当たり前です。
無意味な放流でサケの命を犠牲にして川を荒らさないでほしいと思います!
毎年行われる恒例行事になってしまうと3月に放流されるサケの稚魚の影響で2月~3月に海から川に天然遡上してくるアユの行動に変化が出てくるのではないかと心配です。(エサの競合・外敵の増加)
サケの放流だけがその原因ではないと思いますが現にその河川で数年前まで大量に天然遡上していたアユがここ最近はほとんど見られなくなりました。
元々いないサケの放流を積極的に行うのではなく、天然遡上しているアユや在来種の保全や「なぜアユの遡上が少なくなったか」などを考えることが地域の自然環境を守り子供たちに伝えていく大切な事ではないでしょうか。
子供たちにはそういった間違った放流を行うのではなく、まず自分たちの住む地域の川の事をもっと知ってほしいと切に願うのです。
その川にサケがいない、いた記録がないということはサケに適した環境ではないからという事です。
生き物の営みは大昔からその土地に合った環境に寄り添って何十年とかけて育まれ現代に繋がれているもの。
なんとなく話題になるから、なんとなくサケの卵を育ててるって珍しいし、なんとなくインパクトがあるからと報道するメディアや宣伝する企業も今一度地域の環境の事をよく調べてほしいと願います。
こちらの記事はサケでもないし川でもないのですがこのような流れ(当事者が疑問に思って行動すること)が進めばいいですね。
川のゴミ問題、最近は海洋マイクロプラスティックが問題なっていますが、海洋マイクロプラスチックのもとになるプラゴミのほとんどは川から海へ流れ出ています。
河川の一部や魚一種に目を向けるのではなく、河川全体や生態系、河川のゴミ問題などもっと目を向ける必要があると思います。
魚の放流のガイドライン
魚の放流については日本魚類学会の「生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン」が大変参考になります。
サケの放流を行う理由が生物多様性の保全や子供たちへの環境教育を行う事なのか、何のためなのかを意識し、その影響まで考え行う必要があります。
サケの放流イベントはインパクトがあり、子供たちへの環境啓発にもなり自然環境を配慮しているイメージがあるかもしれませんが、
その放流、必要ですか?
元々いる在来種を追い出してまで、本来その川にいなかった魚が泳いでいる姿を見たいと思いますか?
(川に対して関心のない人ほどそう思う傾向がある気がします)
子供たちに残したい自然はこのような環境ですか?
それは鮭(サケ)に限らずの話です。
外来種問題
昨今、外来種問題が各メディアで取沙汰されていて「外来種」という言葉がより世間に浸透してきた気がします。
このような外来種や国内移入種の放流問題への知識は専門家でなくとも一般人でも得られるようになり放流に疑問に思う人たちも増えていると感じます。
今はネットの社会でこういった間違った行いはすぐに拡散されるので慎重に検討をしてほしいと思うのです。
サケの元々いない川のサケは【国内移入種】=【国内外来種】です。※あえてこの表現を使います
放流されたコイによって川の生き物がどこにもいなくなった事例やアメリカザリガニより生態系が破壊された事例など外来種や国内移入種の侵略によって在来種の存続が危ぶまれています。
元々いない魚をわざわざ放流する行為は子供たちに生き物の大切さを正しく伝え川や魚に対する関心を高めるきっかけになるのでしょうか?
子供たちに自然環境の大切さや川や魚に対して正しく関心を持ってほしいと考えるならば、放流という方法が本当にその川に必要な事か、自然環境にとって良い事なのか、まずしかるべき機関や専門家に相談し慎重に検討するべきだと思います。
子供たちに身の回りの自然の大切さを知ってもらうためには、なにも放流だけではないと思います。
放流による影響に想像力を働かせ、もっと地域の身近な自然の事を深く知ってほしいと思います。
生態系はすべての生き物のつながりによって作られています。
われわれ人間もその一部です。
一つのバランスが崩れると取り返しがつかない事態になる恐れがあります。
小さいことかもしれませんがその小さい生態系の変化がやがて大きくなり私たち人間にも影響を与えていきます。
今一度深く考えてほしいと思うばかりです。
まとめ
サケの放流やその他の魚の放流は「良い事」とされるイメージがありますが本当にそうでしょうか?
そこにサケは自然に分布していましたか?
サケに限らず、その河川にその魚は分布していましたか?
自然のプロセスを考えず人間の都合だけで生き物の営みをコントロールし、生態系が崩壊した川に魅力があるでしょうか?
子供のころの記憶は大人になってもずっと残ります。
私は子供たちにとっての故郷の川の記憶をそんな川にしたくないと思います。
生態系が乱れる恐れのある行いに加担してしまった事を知った子供たちはどう思うでしょうか?
その後どんな大人になっていくでしょうか。
大人にこそ自然環境の教育が必要なのかもしれません。
昨今の放流問題もいなくなったものを放流などで補うのではなく
「なぜそうなってしまったのか」「どのように再生していこうか」の想像力が必要だと感じます。
そのための第一歩はまず足元の小さな身近な自然の存在に気づき大切にすることではないでしょうか。
■なぜ今、外来種や国内外来種が問題になっているのか、遺伝子汚染がもたらす今後の課題やこれからの国内外の外来種についての問題を考えるきっかけになる一冊になるかもしれません。
■この機会に子供たちと一緒に日本の外来種の事をおさらいしてみませんか?
子供たちがもう一歩踏み込んで外来種を学ぶことが出来る本です。
わかりやすく面白おかしく書いてあるので子供にも大人にもとても読みやすい本でした。
それぞれに強烈なインパクトがある外来種ですがイラストもかわいいいので不思議と愛着がわいてきます。
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